角川文庫 SFジュブナイル・シリーズ
第十番惑星
(セルゲイ=ベリヤーエフ・作/袋一平・訳/川名保雄・挿画)
(1976年8月 初版)
(はじめに)
本書『SFジュブナイル 第十番惑星』は、角川文庫より1976年8月に発行されております。
この本では、この作品の著者がアレクサンドル・ベリヤ−エフだとされております。
ところが、掲示板にて、
それは出版社の間違いであって、
実はセルゲイ・ベリヤ−エフの1945年の作品だという指摘がありました。
http://www.startingweb.com/bbs.cgi?job=viewthread&bbsid=3515&mid=208
ご指摘下さったのほほさん、ありがとうございました。
このサイトはSF研究のサイトではなく、私が読んだ本について個人的に思ったことを書くサイトだという性格を鑑み、
この項目は、アレクサンドル・ベリヤ−エフ原作としたこの本の、あの時点での私の読書感想文だということで、
そのまま置いておくことにします。
また、今後も至らないことがあるかと思いますが、また何か気が付いたことがありましたらご指摘お願いします。
★登場人物★
ミハイル・ソルンツェフ博士……厳格で気難しいが、天文学の権威。
ユーラ・クリチギン
……ソルンツェフ研究室出身のNO.1。
ソルンツェフ博士は彼を講座の後継ぎにするつもりだったが、突然、アルタイの天文台に旅立ってしまった。
今回、突然博士を訪れ、彼が発見した第十番惑星に案内する。
タチヤナ嬢……ソルンツェフ博士の助手。
ラリ……第十番惑星に住む、歴史学者。
ソルンツェフ博士の友人・ラリオン=ペトロウィチ博士に似ている。
博士とユーラを親切に案内する。
イブン……第十番惑星の博物館の番人の息子。
ソルンツェフ博士の天文学研究所に時々見学に来る、少年団の班長のイワンに似ている。
ターチャ……イブンの妹。タチヤナ嬢に似ている。
昔の駄菓子屋さんの店先に並んでいた、猫がちょこんとうずくまったような形のカクネコビン型プラケース。
その中に人気の駄菓子をたっぷり40個詰め込んだワクワクセットと、懐かしいおもちゃ12点がドッキング。
まさに、パラダイスの気分が味わえます。
□おもちゃの内容: デイズニー貯金缶、ソフトグライダー、ぴょんぴょんカエルヘリコプター、 スーパーボール、シャボン玉、紙風船、ようかいけむり、吹き戻し、 キャッチ ボール、ジャンピングスマイル君、プルバックカー
□駄菓子の内容: 前田のクラッカー、クッピーラムネ、人参ライス、ふ菓子、餅太郎、 どんどん焼、 テキサスコーン、ハイトーチャ、はなくし、きびだんご など40点入り
★あらすじ★
地球と同じ軌道をまわり、太陽をはさんで正反対の位置にある、地球から姿を見ることはできない、未知の太陽系第10番惑星!
ソルンツェフ博士は教え子ユーラに光子ロケットに乗せられ、宇宙に飛び立つ。
地球と同じ光景がそこにあった。だが空には二つの月がかかり、地上には恐ろしいゴリラ人間の姿が……。
★書評:太陽系にもまだまだ謎はある!
反地球をテーマにした、ベリヤーエフにしては明るい結末のSF!!★
(ネタばれあります。注意!)
角川文庫のSFジュブナイルシリーズとして出された本です。5年ほど前、ブックオフで買ったものです。掘り出し物ですね。
一時期、角川文庫から出ていたのSFジュブナイルシリーズは、時々古本屋で見かけます。もっと続いてほしかったですね。
確か徳間文庫も、一時期ジュブナイルSFシリーズ(コスモス版)を出していました。
訳者は、袋一平さんです。この方の名前は、非常に思い出深いものです。
小学校低〜中学年くらいのころ、母親に連れられて母方の祖母の家に泊まりに行った時(実は祖母の家は県庁所在地にあり、私の家は本屋もない田舎にあった。一般的な里帰り、とは逆に、私の場合は都会に行くことになるのである。)、ある百貨店で『なぞの宇宙人』という小学生向けの本を買ってもらったのです。
この本が面白くて面白くて、夜遅くまで読んでいたものです。
その後、何度も何度も繰り返し読み、今でもあらすじははっきりと覚えています。
この本、現代ソビエトのSF小説(アレクサンドル・ポレシチューク作)であり、訳者が袋一平さんだったのです。ソビエトSFの研究者かな、と思うのですが。この方の名前を見ると、『なぞの宇宙人』を思い出します。
今では祖母は亡くなり、あの百貨店も業績不振でなくなりました。
この本、今でも実家にあるので、いずれこのHPで紹介するつもりです。
角川文庫版『第十番惑星』に戻ります。
SFジュブナイルだからでしょうか、挿絵があります。
川名保雄という方です。欧米風のポップな画風で、それがこのSFにピッタリマッチしています。
表紙もなかなか印象的です。相当の実力者、と見た。
SFの分野では、地球と同じ公転面を、地球と同じ速さで回る地球にそっくりな惑星をテーマにしたものがあり、この惑星を「クラリオン」「反地球」「カウンターアース」などと呼んでいるそうです。
そういえば、マンガ『キン肉マン』に、プラネットマンという超人が出てきます。彼は太陽系九つの惑星からできた体を持っていました。彼の頭の部分は、最初は地球だとされていましたが、やがて、地球と反対側を回る反地球・バルカンだったと正体が明らかになります。
これを読んだ当時、この設定、地球と同じ軌道を回りながら太陽の陰になって見えない、というアイディアに、スケールの大きさ・SFチックなロマンを感じて、おおっ、と驚いたものでした。
科学的には、地球と同じ公転面を地球と同じ速さで回っていても、ケプラーの法則から、太陽の陰に隠れ続けているわけではありません。しかし、2つある楕円の焦点のうち1つを共用し(すなわちここに太陽がくる)、もう一つの焦点を太陽をはさんで点対称の位置に置く。2つの楕円が交わる形になりますが、こうすると、地球と同じ速さで公転することにより、地球から隠れ続けることができるのですよ。何と、盲点を突いた素晴らしいトリックですね。
ベリヤーエフは、第十番惑星ジャリメは地球と同じ軌道を回っている、と設定しています。
そして東から西へ自転し、四つの衛星を持っており、地球と同じような進化をたどって人間が住んでいるというのです。
ソルンツェフ博士とユーラが第十番惑星の存在を論争する際、
「きみはニュートン力学に反対しようとするのかい。」
「でもね、先生、この永久のもののようにおもわれている法則も、よくよく研究してみると、それほど永久のもののものではない、ということがわかってきたんです。ニュートンの天才も、それが通用するのは、数億年という時間のくぎりにだけです。」
という会話が出てきます。
アインシュタインの特殊相対性理論が発表されたのは1905年、一般相対性理論は1916年。この本が出版されたのは、解説には書かれておらず、私も検索サイトで調べましたが、記述はありませんでした。ベリヤーエフは1884年〜1942年の方で、1925年にデビュー作『ドウエル教授の首』を出しています。
(注:冒頭に記したように、この作品はセルゲイ・ベリヤ−エフ原作でした。
ご指摘下さったのほほさんによりますと、1945年の作品のようです。)
ベリヤーエフはアインシュタインの相対性理論をふまえて執筆していたのでしょうか。
ちなみに、第九番惑星・冥王星が発見されたのは1930年。ベリヤーエフは、第十番惑星の存在を想定することで、水星の不規則な動きが説明できる、としています。
ベリヤーエフは病気に耐えながらたくさんの本を読み勉強し、それをもとにSFを描いたそうです。
「夢や願望が科学の発達にむすびつく場合もあるし、このように科学的基礎の上で組み立てられるSFで開花する場合もあるのです。ソビエトのSFがこのようなベリヤーエフを始祖のひとりとして出発したことは、ある意味でその後の進路を決定づけたといえます。」
と解説で内田庶が述べています。
第十番惑星・ジャリメには、かつて色々な種族の人間が住んでいました。しかし、その中の好戦的な一種族が他の種族を征服しようとして戦争を起こしたのです。他の種族は団結し、ついにその種族を倒し、平和をもたらすことができたのです。
人々が平和に生きることを決めてから300年後、ジャリメの人々は、戦争を記録した博物館を壊し、新しく幸福の都を建設しようとしています。ソルンツェフ博士とユーラは、そのようなお祭りの日、いわば新世界記念日とでもいう日にジャリメに到着したのです。
博士は、ラリやイワンらに案内されてお祭りを見学します。しかしユーラが、光子ロケットに故障が起こり、ぐずぐずしていたら地球に帰れなくなる、と博士を呼びにきます。ジャリメの人々の幸福の都のお祭りをもっと見ていたい、と渋る博士にユーラは
「ぼくたちが、じぶんの第三惑星に、もっといい都市をつくったほうが、ずっとましじゃありませんか」
と言います。
「そうだ、わたしたちも、ジャリメの人に負けないように、わたしたちの地球に幸福の都をつくらなければならない……」
博士は、地球の人々や環境を懐かしく思い出すのです。
博士を研究所に送り返し、ユーラは慌ただしくアルタイに帰っていきます。
そして、タチヤナ嬢に起こされた時……、さきほどタチヤナ嬢に出されたお茶はまだ温かかった!
……波乱万丈の大冒険が実は夢だった、という結末(夢オチ)は、ありそうでないものです。
思い浮かぶのは、ルイス=キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』くらいです(あと、手塚治虫漫画全集版のあの作品も)。
今までの冒険は一体なんだったんだ、とカクンときますが、ベリヤーエフはこの作品で夢オチを使いました。ユーラが光子ロケットを運転している、という時点から、おかしいと思っていたのです。そういえば光子ロケット、というアイディアもアインシュタインの影響を感じます。
それにしても、平和を実現してお祭りをしている第十番惑星の人々、彼らに歓迎される主人公、地球を良くしていこうと決意する主人公、あっけらかんとした結末、とベリヤーエフには珍しく一貫して明るい作品です。
現実ではなく夢だからこそ明るく描けたのでしょうか。
(冒頭に記したように、この作品はアレクサンドル・ベリヤ−エフの作品ではなく、セルゲイ・ベリヤ−エフの作品でした。)
第九番惑星・冥王星が発見されて数年後。まだ人工衛星も月面着陸もなかった時代。太陽の向こう側のもう一つの地球を夢見ることができた時代。
この夢見る心をいつまでも持ち続けたいものです。
2002.6.23(日)
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